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別に用意されている(MIGMOD)。ただし油の濃度分布に生物の分布・移動を重ね合わせるだけで、生物の油に対する回避行動などはまだモデルに組み込まれていない。
なお、OSCARの原型は米国の沿岸海域を対象として1980年代に開発されたNRDAM (Natural Resource Damage Assessment Model)であり、ものモデルの概要はわが国でも翻訳・紹介されている。(Reed,M. et al. Realtime simulation and detection of oil spills.海洋工学コンファレンス論文集、11、65-90、1994年)。
最近はさらに上記のような短期の油汚染の影響のほかに、石油掘削の際に油水分離装置から出てくる産出水(produced water)の生物に対する長期的な影響を予測・評価するためのモデル(PROVANN)の開発が進められている。産出水の成分は、微量な油滴のほか水に溶解した微量の原油、重金属類や各種の化学薬剤から成り、実際にはその場所の地層特性などを反映して掘削プラットホームごとに異なっている。もともと低濃度である上、海水で希釈されるので短期的な影響は小さいと考えられているが、長期的に生物に濃縮され、さらに食物網に取り込まれてその影響が増幅されることが懸念されている。そこで、Reed博士とRye博士らが中心となって、まず1990年から5年間の日々の風のデータを用いて流れの計算を行い、その期間に北海油田(ノルウェーのほかに英国とデンマークの管轄区域を含む)から排出された産出水の累積的な広がりや濃度分布をシミュレーションする試みがなされている(図16)。生物影響についてはまだ十分の検討がなされていないが、図17に示すような生態系をモデルに組み込んで生物への蓄積や生物間の転送の過程を定量化することが計画されている。産出水の化学成分によってその物理的な挙動や分解・変質速度、生物に対する影響が異なるので、実際には主な成分ごとに影響を評価することが必要である。
一方、Lewis氏からは、1995年8月に実施されたリモートセンシングによる油分の検出とモニタリングに関するNOFO (The Norwegian Clean Seas Association for Operating Companies)の現場実験の結果を紹介してもらった。この実験は1994年に実施された分散剤の効果を調べるための現場実験に引き続くもので、レーダー(SLAR)、紫外線・赤外線スキャナー(UV/IR)、3波長のマイクロ波放射計(MWR)など各種センサーを搭載した航空機と人工衛星(ERS)により、実験的に海面ならびに海中(100m深)から流出させた油の時間変化を観測し、油の拡散特性や分散剤の散布方法による効果の違い、さらには各種センサーの検出性能などが比較・検討された。UVでは検出可能な油層厚の範囲が広いので油パッチの拡散範囲がとらえられるのに対して、IRとMWRではとくに濃度の高い部分が検出されている。これらのセンサーを組み合わせることによって油パッチの立体的な構造

 

 

 

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